石転び沢から花の稜線へ 巨大落石の恐怖



- GPS
- 13:33
- 距離
- 19.4km
- 登り
- 1,912m
- 下り
- 1,760m
コースタイム
- 山行
- 9:21
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 9:51
- 山行
- 4:45
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:45
天候 | 6/13快晴 6/14曇り→小雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
◇温身平~倒木やヘツリのアップダウン多く要注意、ババマクレなどにはロープや鎖が設置済み、ありがとうございます ◇梅花皮小屋までせり立つ雪壁、確実なアイゼンワークが必要 ◇烏帽子への稜線は少々の残雪あるもアイゼンなどは不要 ◇落石にはくれぐれも要注意、雪で削られ今にも落ちそうな岩がたくさんありました |
その他周辺情報 | 梅花皮荘(日帰り入浴@500円) |
写真
装備
個人装備 |
アイゼン
ピッケル
ストック
ヘルメット
避難小屋泊装備
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感想
ちょうど1ヶ月前に梶川から見つめた石転び。幸い休みと晴れが重なり、即座に石転び行きを決めた。
石転びと言えば温身平先のサンカヨウ。思っていた以上にその数は多く、しかも大輪のサンカヨウがピークと言ってもいいほどの満開、思わず歓声を上げる。
整備されたロープや鎖に感謝しながらヘツリを越えてゆく。一旦雪渓に下りるもその先が割れていて再び藪漕ぎを経て夏道へと戻る。地竹原の先で無事雪渓に乗り、アイゼンを履く。
ほどなくして滝沢の出合、重荷を置き梅花皮大滝へと向かう。近づいてくる轟音、頭上はるか上から何段もの落差をものすごい水量が降ってくる。全身で感じる水しぶきと地響き。世界百名瀑のひとつ、梅花皮大滝がパックリと口を開けたシュルンドにゴンゴンと吸い込まれてゆく様子に圧倒された。今季の大雪だったからこその巡り合わせだった。
再び重荷を担いで歩き出す。広い広い大雪渓、少しずつ勾配がキツくなり、徐々に雪上に転がる石の数も増えてゆく。こんな大きな岩が落ちてくるのかと驚く。翌日にそれが現実になるとはよもや思っていない。
いよいよ稜線への雪壁を眼前に捉え、ピッケルに換装する。壁を這い上がる先行者が豆粒のように見える。広過ぎて感覚がバグってしまうが実はまだまだ遠い稜線、緊張しながらの一歩一歩、ひたすらの上り。見上げても景色が一向に変わらない、ふり返れば足がすくむ。ようやく梅花皮小屋が見えた瞬間には歓喜した、そこからもまだ長いのだけれど。
やっと上がった稜線、出迎えは残雪まとう北股岳と遥かなる大日岳、そしてハクサンイチゲのお花畑だ。小屋に重荷を置いたら、疲れを忘れて烏帽子岳へとお散歩。ゼブラとイチゲ、北股とイチゲ、大日とイチゲ、そして本山へと続く稜線、眺めたい、撮りたい景色が盛り沢山でなかなか進まない。
小屋に戻ったら早速乾杯、この日の宿泊者は全部で8人。ゆったり快適に過ごす。夕暮れ時には皆外に出て美しいひと時を堪能した。
翌日の予報は昼から雨となった。意を決して石転びを下りる。ビビリな私は怖くて前を向けない。延々とクライムダウンを続けたら、手足が痺れるほどだった。なんとか前を向いて歩けるようになり、何人かとおしゃべりしながらスライド、ホッとしたのも束の間、背後遠くから「ラーーーック!!」という大声が聞こえる。ふり向くと頭上遥か、おそらく左岸の北股沢方向から数メートルはあろうかという大岩が右岸へと勢いよく転がっているのが見え驚く。大岩はせり出た岩壁へと向かっている、頼むそこで止まってくれと祈る。崖に隠れ岩が見えなくなる、一瞬の静寂の後、ドーーーン!!という轟音と共にその大岩が岩壁にあたり、天高く跳ね上がった。「嘘でしょ!!」と青ざめる、体が動かない。そのやや平たい大岩は遠心力に任せ、長い径を軸にしてでこぼこの硬い雪面を猛スピードで私に向かって落ちてくる。どっちだ、どっちに逃げればいいんだと身構えるが、大岩は右へ左へと不規則に跳ね上がりながら落ちてくる。まるで歯の粗い電動ノコギリだった、3Dの特撮映画だった。逃げた方向に大岩が来た。もうダメだ、終わりだ、と重荷を担いだまま精一杯飛んだ。滑り落ちながら背を丸めかぶったヘルメットを抱えた。
しばらくそのまま動けなかった。「まだ落ちてくるから立ち上がって!!」という同行者の声、数十センチの硬い雪塊が体に当たって我に帰る。どうやら私の背後1メートルほどのところ、私と同行者の間を大岩は転がりかすめていったらしい。いくつかの石が転がり落ちていくのを見届けて、もう大丈夫と思ったら涙が溢れた。
その夜は眠ろうと思ってもあの時のシーンが何度も思い起こされてなかなか寝付けなかった。こうして無事生かされているけれど、本当は自分は死んでいて、ここは別の世界なのかもしれないとも思った。私の山歴の中での1番の恐怖だった。
あの時ラーク!と声をあげてくれた方、本当にありがとうございました。石転びは上りはもちろん下りはさらに危険です。ガスっていればリスクはさらに上がります。皆様どうぞご安全に山歩きをお願いします。今後も安全最優先で参ります。
コメント
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でも、なぜ石転び沢を登らないのか分かりました!クライムダウンの貴重な写真を見させてもらいましたので(^^)
愛車の元に辿りついた時には、無事の下山にホッと胸を撫で下ろしました。2日目はあいにくの天気で雪も硬くて本当に怖かったです。私のへっぴり腰がお恥ずかしい(笑)よほど全身が緊張していたのか今日はひどい筋肉痛です。
それでもこの時期の花の稜線の美しさは格別でした。懲りずにまた向かいます、別のルートで(^^)
素晴らしい画像をいつもありがとうございます♪
Instagramも拝見させていただいてます!
自分は
いつも山々からの絶景に声を上げつつ、
帰って撮った画像を見てはがっかりしています(^◇^;)
肉眼より素敵な景色は無いものだと諦めていましたが、それも撮影技術なんだと投稿を拝見させていただき痛感しています。。
石転びは丁度落石の時期ですね。。
先日もどんどん崩れてました
ロシアンルーレットの様で怖いですよね😱
いつもご覧いただきありがとうございます(^^)
やはりこの肉眼で見たもの、実際に肌で感じたものにまさるものはないと私も思います。それが何よりの思い出になるとも思います。写真はその記憶を鮮明に思い出すための手段に過ぎないかな、とも。ただ、写真を見てくださった人が、まるでその場にいるかのような気持ちになれる、そんな写真を撮りたいと思いながらいつもファインダーを覗いていますので、私の拙い記録を見て、ここに行ってみたいと思ってくれたなら最高の喜びです(^^)
落石は本当に怖かったです…今こうして返信を書いている世界が本当に現実世界なのか、自信がありません(T_T)
サンカヨウ綺麗でしたね。梅花皮大滝を見に行くアイディアは思い浮かびませんでした。次はぜひ見に行こうと思います。
あの大岩が岩壁に当たった時のドーン!!という地響きのような轟音は今もハッキリ覚えています。高く跳ね上がった大岩と同時に砕けた岩がこちらに降り注いできました(>_<)梶川にも聞こえていたのですね。あの日お会いした皆様が無事で本当に良かったです。
梅花皮滝、良い機会なので訪れてみました。滝沢出合からすぐの雪渓がだいぶ危うくなっていたのでそろそろどうかな?という感じでした。どうぞご安全にお願いします。
小屋はゆったりと使えて快適でしたね。またぜひ飯豊のどこかでお会いしましょう(^^)
こんばんは!
本当にご無事でよかったです。お二方、怪我もなくて何よりでした。
文面だけでも落石の恐ろしさが映像として目に浮かんで来ます。
果たして自分だったら ラーークと言えただろうか、とっさに避けられただろうか。
リスクが高いシーズン。不測の事態ではなく、いろんな状況を想定しなければならないと改めて思いました。
大変お疲れ様でした。
ハイ(>_<)尾根歩き、のどかな木道歩きが主の私にとってはとても恐ろしい体験でした。大岩が轟音と共に高く跳ね上がった瞬間、体が硬直しました。嘘でしょ?!やばい!やばいって!!と喚き叫び、声にならない声で絶叫していたはずです。逃げたいのに足がなぜか重くて動かない、夢でよく見るそんな感じでした。
必死でアクションスター並みに飛んだつもりでしたが、実は全く飛べていなかったのは今となっては笑い話ですが(笑)もう2度とこんな体験はしたくないです。
Tomさんもどうぞご安全にお願いします(^_^)
はじめまして。taromiiと申します。
ご無事のご帰還、本当に良かったです‼️。本当に恐ろしい思いをなさったのだと思うと、言葉もありません。
今迄、緊張溢れる多くの場面もクリアなさってきたcheeさんにこんな事が起こるのだなんて。。自然現象による災害?は誰にでも平等に起こるのだと、気をつけても山に危険は潜んでいるのだと、改めて感じさせていただきました。私も石転び雪渓を歩いた事があるだけに、人ごとに思えずコメントさせていただきました。
どうか、恐かった記憶が少しでも早く薄らいでくれることを願っております。またcheeさんの美しい写真満載の、うっとり💕、ワクワク♫するレコを楽しみにしています。
大キレットや奥穂西穂なんかより、蟻の戸渡より、とにかく死をすぐ隣に感じたのは今回が1番でした。
しかしそういえば武能西尾根のナイフリッジや、朝日蛇引尾根の一本吊り橋。これらも相当な怖さだったな、と思い出しています。
がやはり、大自然の引き起こすこういった突発的な現象になすすべなく立ち尽くす人間は本当にちっぽけな存在なんだとあらためて思い知らされました。
これからも安全最優先で参ります。taromiiさんもどうぞご安全にお願いいたします(^^)
やっぱり、石転び!ですなぁ…
クライムダウンかっこいい💕
思い出すだけで手に汗かいてます。石転びならぬ、大岩転びでした(*_*)
延々のクライムダウンは、見上げても見上げても全然下りていなくて、本気で日が暮れるかと思いました(笑)
ラーーーックの声で振り向くと轟音と共に北股沢から岩塊が雪面を削ぎ落としながら対岸の岩壁へ吸い込まれていく
一瞬の静寂、そして安堵も束の間、腹に響く轟音とともに砕けた無数の岩塊が宙を舞い上がる
岩塊が高々と放物線を描いて宙を舞う光景は
まるで映画のワンシーンの様だった
それと同時にあんなにデカい岩が宙を舞うのかと冷静な自分がいた
すぐに我に帰る
迫り来る無数の岩塊、中でも一番でかい岩塊が厄介だった
不安定な挙動、右へ左へとバウンドを繰り返しながらこちらに迫ってくる
逃げてと声を張り上げる
転がってくる岩から目が離せない
マジか・・・ もう逃げ切れないかも
岩の回転面が認識でるギリギリまで挙動を確認し右へ逃れる
2メートル、いやもっと距離はあったかも知れないが左側を岩が通過
振り返ると勢いそのままに3メートルほど先のCへ向かって岩が転がって行くのが見えた
一瞬の出来事だった
岩が転がる方向とは別へダイブし難を逃れる
安堵する間もなく次の岩に備える
次々とラグビーボール大の石、雪塊が転がってくるのが見えた
こちらに来ないことを確認しようやく緊張から解放された
この場所にとどまってはいられないので再び足早に歩みを進め帰路につく
改めて山と真摯に向き合うきっかけとなった山行だった
あらためて気を引き締めて、これからも安全最優先でいきましょう(^^)
何度かレコ見てて、まさかcheeさんだったとは、小屋でお隣にお邪魔したzoukiです。
下山にも石転び沢を使ったのですね。我々は前日の登りで大岩が落ちてきたので、下りはガスもあったし怖くて梶川尾根で下山しました。ご無事でなによりでしたが、もう友人にはお勧めしないルートです。景色を楽しむ余裕も無かったし。
今後もきれいな写真、楽しみにしてますよ。
zoukiより
小屋で皆様の楽しそうな会話が聞こえてきましたが、落石の話もされていたので私も気をつけないとと思っておりました。初日も落石を見かけてはいましたが、まさか翌早朝にあんな大きな落岩に遭遇するとは。
それでも初日はよく晴れて爽やかな日となり、ゆったり過ごす小屋でのお酒も美味しく、最高の日でしたね♪
無事に生かされたので、この経験を今後に役立てていければと思います。またどこかでお会いしましょう(^^)
怖い思いされたのですね😣
読み進めるにつれて、自分もその場にいるような緊張感でいっぱいになりました。
まずは、ご無事で本当に良かったと心から思います。
石転び沢、計画しておりましたが、cheeさんのレコを拝見して少し悩んでいます…
抗えない自然の力、それは恐怖でもあり、時に感動の場面でもあり。
真摯にお山に向かう事を、改めて感じさせられました!
それでも飯豊連峰のたおやかで雄大な景色は、何度でも訪れたくなる美しさですね🤗
cheeさん、素晴らしい記録をありがとうございました✨
そして本当に、お疲れさまでした。
ご無事でよかったー😭
あれから数日が経ちましたが、まだまだ鮮明にあのシーンが思い起こされます。スローモーションのような、早送りのような、数十秒でした。夢だったような感覚もありますが、腕に負った大きな内出血が現実だったと教えてくれています。
それでも青空に向かいひたすらに上った石転び雪渓の美しさ、ようやくの稜線で出迎えてくれた花達の愛おしさはやはりひときわでした。
好天の週末ともなれば多くの人がきっとこの絶景を求めていらっしゃることでしょう。shoさんもどうぞご安全に夏の飯豊を楽しまれてください(^^)
ドキドキしながら読ませて頂きました。
私も一度北岳の大樺沢でやはり巨大な落石を目の当たりにして…横目で見ていただけでも動けなかったというのに、もうもうお二人の状況想像しただけでも泣きそうに😭
自然の美しさは危険と隣り合わせだと改めて肝に命じました。
でも、この経験が糧となり今後は益々安全に美しい山々に出逢えますように✨
cheeレコ楽しみにしていますね😊
まるでついさっきのことのように思い出されるあの出来事…あんな大きな岩があんなに天高く飛ぶだなんて、そしてそこからズドーン!何度もバウンドしながら不規則に方向を変えながら落ちてくるだなんて、まさに映画のクライマックスシーンだったよ。最後はアクションスター並みに横っ飛び!!したつもりが実は全然飛べていなかったんだけどね(笑)
yukaちゃんは今シーズンもたくさん滑ったかな?これからは沢登りだね。お互い安全最優先で楽しもーう(^^)/
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