黒部五郎岳から雲ノ平縦走(神岡〜新穂高)


- GPS
- 32:03
- 距離
- 43.8km
- 登り
- 3,526m
- 下り
- 3,753m
コースタイム
- 山行
- 7:44
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 8:04
- 山行
- 7:51
- 休憩
- 2:18
- 合計
- 10:09
- 山行
- 7:06
- 休憩
- 0:43
- 合計
- 7:49
天候 | 5/2 晴れのち雪 ゆるい縦縞で上空に弱い寒気 https://tenki.jp/past/2022/05/02/chart/ 5/3 ガスのち快晴 午前中強い西風、午後より穏やか https://tenki.jp/past/2022/05/03/chart/ 5/4 曇りのち快晴 南風 https://tenki.jp/past/2022/05/04/chart/ 5/5 快晴 猛暑日 https://tenki.jp/past/2022/05/05/chart/ 稜線の気温は5/2-3は標高2400前後で早朝-5°Cくらい。シュラフは冬用が無難。日中はプラスまで気温が上がるため、汗で濡れないようこまめに着替えを。 |
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過去天気図(気象庁) | 2022年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
自転車
新穂高温泉に自転車デポ → 飛越新道登山口に駐車。トンネル1km手前デブリまで (帰り) 新穂高温泉から駒止橋(金木戸川)まで自転車 → 濃飛タクシー 0578-82-1111 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・モード 飛越新道ー神岡新道合流手前まで雪不足でシートラ。その先はずっとシールか滑走。寺地山〜小池新道入口の間で渡渉と雪切れを除けば、板を担ぐ区間はほぼ無い(大ノマ乗越への登りはデブリがあり一部シートラ)。 ・渡渉 五郎沢と黒部川は共にスノーブリッジなし。五郎沢は浅くシートラ飛び石渡渉、黒部川は深く股下渡渉。祖父沢も割れており、途中から右岸の小尾根に上がった。 ・雪切れ 三俣〜双六の稜線に数箇所、双六谷にも2-3箇所あり。板は履いたままヨチヨチで通過した。 |
その他周辺情報 | 日帰り温泉は平湯民俗館。駐車場無料、入浴料は寸志。土産・地酒はつるやで民俗館から歩いてすぐ。 |
写真
装備
個人装備 |
NEMOホーネットストーム1P
アルミペグ
スノーソー
スコップ
OD缶250
OD缶110(予備)
ライター
マッチ(予備)
果物ナイフ
ISUKAシュラフ限界温度-20°C
サーマレストxサーモ
銀マット
ほか山スキー装備
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備考 | ・半自立式テントは風に弱く、稜線なら防風囲いした方が安全。それか棺桶の半イグルーにし天井をツェルトで覆えば軽量化は出来るものの、快適性とのトレードオフ。 ・食事はメインにクスクス500g、パプリカとキュウリ2本ずつとドライフルーツ、ミックスナッツ各1袋。塩と香辛料混ぜて蒸した。朝食分はグラノーラ300gと米粉パン。 ・残雪溶かしての水作り用に150〜200mlは常にキープしとくと良い。 |
感想
< プロローグ >
例年GWの天気は長続きしないことが多い。幸いにも予報は5/3-5日晴天続きなので、チャンスは逃さず泊まりで好きな山域へ行こう。シルバーウィークにも行った黒部川源流。何かに突き動かされたように地形図を広げる。そして3泊+予備分をザックに詰めてみた。重い。これでまともに滑れるかも怪しいので、4泊以上は無理と悟る。無垢にワクワクして、虎視眈々と計画修正して、パッキング調整。その無限ループが山行前日まで続いた。目標は高天原。
< 1日目 飛越新道〜赤木平 >
夜中新穂高にチャリデポし山吹峠経由で和佐府へ。林道凍結もスタッドレスで問題なし。トンネル1km程手前がデブリで塞がれていて、縦列が出来上がっていく。明るくなりシートラで歩き出すも雪はずっと繋がらず。今冬は多雪だったけども、春の雪解けスピードが一段と速い。神岡新道の分岐する尾根から急に雪が増え、前日の新雪が針葉樹林を白く覆う森の中をシール歩行開始。太陽が眩しい。パウダーとは程遠い重湿雪で、ストップスノーになるまではあっという間だった。
肩の荷が重いと、悪雪のシール滑走/シール斜滑降が凄く難しい。板を掴まれた途端に上半身の重心を振られる。カニ歩き下降すると足元の新雪がグズっと崩れ下地の氷がむき出し。寺地山からのアップダウンを騙し騙しこなして森林限界へ。良かったと一瞬思ったら天気崩れた。風が唸り立山がガスに消えていく。予想通りの小崩れで明日には回復を織り込み済み。ハイマツ帯の上に新雪が厚く乗っているお陰でハイマツ漕ぎはなく、すんなり稜線に着いた。北ノ俣頂上へは残りわずか50mだったが爆風なので無難にパス。シールを剥がし、慎重にドロップして赤木平へ滑走。上下真っ白で雪酔いした。西風は止まず視界なく小雪が舞い出したので、塀で囲いテントに籠もる。冬用シュラフでヌクヌクとラジオを聞く。
< 2日目 赤木平〜雲ノ平 >
今日から天気は回復に向かう。夜明けと共にガスが薄れていき、黒部五郎が顔を出したので撤収し出発。赤木平から同標高ラインをトラバースして行くと、先を行くパーティのトレースに出くわした。薬師沢からだろうか。ノートレースでは足首下くらいのサラサラ雪なので、中俣乗越まで有り難く使わせてもらった。やがて空は快晴に。対岸の薬師岳が素晴らしい。黒部五郎の登りは肩が見えていても着かず、長く感じる。肩につくと頂上だけは西風、でも二本足で立てる。ピークから棚引く雪煙は凄かった。空身ツボ足でさっと登頂して滑走準備、カールへとドロップした。
出だしは壁だけども既にスラフで荒れていて、刻みながら呆気なく底に下りた感じだった。五郎沢へ滑り込み北東を向くと少し雪が軽く、気持ちよくシュプールが残る。振り返ると五郎のカールはだだっ広い。ノールを過ぎると谷が深まり、水音がしてまもなく沢割れが始まった。最後に左岸へ渡り沢割れのまま黒部川に出合ったので、まずは五郎沢渡渉から。沢床に下りる弱点を探し出し、シートラ兼用靴のまま飛び石で水を渡ってまた対岸を登る。水量は少なく、石もヌメりがなくて楽。人の声がして驚いて振り返ると山岳部だろうか、赤牛岳を滑るという若い大所帯パーティ。ポイントを伝えて彼らも渡り出した。
祖父沢出合に向かって黒部川本流左岸を遡る。雪解け水は瑞々しくキラキラ。竿持ってくれば良かった、とこの時は呑気に考えながら歩く。しかしあるはずのスノーブリッジが一向に出てこない。川岸は急斜面トラバースが出てきて、ずり落ちすれば黒部川に飲み込まれる。山足をグライドした後、谷足はポンと強く置くことでグズ雪を崩し、下地にエッジを掛けてゆっくり片斜面を進む。河原が広がったり、中洲が現れる所へ迷走しては高台に登って観察するも、スノーブリッジ皆無だった。先程の若パーティが水線に下りる弱点を見つけた様子で、皆がじっと見守る中、CLと思われる方がシートラ飛び石に成功。他メンバーたちは股下渡渉の着替え支度を始めた。最後に私も加わる。結構上まで来るよーとのアドバイス。皆と同様、素足のパンツ一枚で雪解けの黒部川を渡った。実は水温が高かったのはネタ秘話にしておきたい。笑
黒部川を渡り終えた先には、祖父平という秘境が待っていた。黒部五郎は見たことのない姿で聳え立ち、池塘がありそうな素晴らしい雰囲気だった。いつか釣行で再訪したい。時計を見ると14時前。日没まで4時間、祖父沢ならさくっと登れるか、と思って谷に出て呆然とした。沢割れ。登っても登っても沢割れ。先程のパーティは途中から右岸P2365に大高巻きし(恐らく高天原峠経由で入ったか)私は祖母岳へ直登した。喘ぎ登る。これはもう私にとっては、高天原は無理するなというサインだった。岩苔小谷が割れていない確証が持てないと、最悪荒天に捕まって電波のないまま停滞、コンパス自動通知が飛んで遭難届とかあり得る。
森林限界を超えた先。そこには見渡す限りの大雪原が広がっていた。雲ノ平だ。雲ひとつない午後の青空。白い大地にあの山荘が浮かび、水晶が顔を出す。振り返れば滑走した黒部五郎。
誰も居ない、一人貸し切りの雲ノ平。感無量だった。私にとってのゴール。最後に1枚水晶岳を撮ると、何と息を引き取ったかのようにカメラが動かなくなった。
< 3日目 雲ノ平〜双六谷 >
高天原分の日程を余したので、のんびり歩くことに。iPhoneで山を切り取る。所々凄まじいモナカ雪だけども、祖父岳だけはサラサラが纏わり付いていて上がるのに苦労した。これは祖父頂上から南東面へ落としたら当たる。直感。真正面には鷲羽西面、槍そして三俣蓮華。ドロップ。超大回りヒャッホーだった。誰も滑った跡がないのが不思議だったが、祖父岳の南東面はおすすめ。三俣ベースに登りは岩苔乗越を詰めて落とせば半日で周回できる。北側のカールも良さそうだ。
三俣山荘に着くと人里に帰ったかのよう。大勢の登山者とスライドした。双六への稜線では穏やかな快晴のもと、行き交う人たちは腰を下ろしつつゆったり山を眺めている。本当に双六山楽共和国、平和な光景だった。丸山で大展望を見納めして、自動運転トラバースで双六小屋へ。双六谷を滑って行くとそこにも雪切れが幾つかあった。うち1箇所ではブッシュに板を引っ掛け大転倒。ストップスノーで滑りづらい。体力は余力がありペースアップすれば新穂高には下山出来るものの、消化試合の末にヘッデンチャリ漕ぐのは御免だ。大ノマ乗越への取り付きでまったり、幕営することにした。双六谷はちょうど湧水してる所があり、簡単に下りて水を汲めた。1日目2日目と寒中訓練みたいだった分、天国のキャンプサイトだった。
< 4日目 双六谷〜新穂高 >
暖かい朝を迎えた。気温はマイナスに転じなかったので、大ノマ乗越から南向きであれば朝8時には緩んでいるはずだ。中間付近までシールクトートラバースで上がり、後半はデブリを嫌いシートラアイゼンに換装して乗越へ。結構な斜度あり、しれっと登る記録が多いのは慣れたスキーヤーが多いからだろうなあと思った。大ノマ乗越を8時15分ドロップすると狙い通り、程よく緩んだ最高のザラメで板が回った。ここも大斜面。下から3パーティほど日帰りザックで登ってくるけども、これは頷ける。滑走重視なら新穂〜大ノマだけで十分で、林道も涸沢行くよりずっと短くて楽。あっという間に左俣林道へ。ワサビ平小屋付近からもう雪はなく時々横断する程度で、シートラ下山。
4日デポしていたチャリは今回も無事だった。車をとりに、神岡に向けて颯爽と下り坂を飛ばす。気温28°C。稜線と30°C以上の差に身体がついていかない。駒止橋に再度チャリデポし、猛暑の峠越えは予約しておいたタクシーで周回完了。平湯民俗館の露天で汗を流して、つるやで地酒と土産を買って帰路についた。
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