立山〜槍ヶ岳縦走
富山県
長野県
岐阜県
nabekuni
その他1人 - GPS
- 152:00
- 距離
- 71.1km
- 登り
- 5,243m
- 下り
- 6,156m
アクセスを調べる
標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 2:15
- 合計
- 7:45
- 山行
- 11:00
- 休憩
- 2:25
- 合計
- 13:25
- 山行
- 7:50
- 休憩
- 1:40
- 合計
- 9:30
- 山行
- 8:00
- 休憩
- 2:00
- 合計
- 10:00
- 山行
- 5:35
- 休憩
- 2:10
- 合計
- 7:45
| 天候 | 8/15：晴れのち曇り、8/16：晴れのち曇り、8/17：雨、8/18：曇りのち晴れ、8/19：晴れのち曇り、8/20：曇りのち雨一時晴れ、8/21：雨のち曇り |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2015年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
ケーブルカー（ロープウェイ／リフト）
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
薬師岳〜薬師岳山荘間は爆風で身動き取れないほどでした。荒天時はスゴ乗越小屋に留まるのが安全です。 |
| その他周辺情報 | 松本市内の「瑞祥」は大型ザック置き場もあり登山者に優しい。 |
| 予約できる山小屋 |
|
写真
拍手
E7系電車。先頭車両にはグリーン車より豪華な「グランクラス」がある。普通車も座席間隔が広くてとても快適だ。東京〜富山は運賃・指定席券込みで12,210円。グランクラスは25,580円、いつかは乗ってみたい。
東京駅で買った牛肉弁当。写真の見た目よりずっと美味しい。ビール飲みながら行けるのも電車移動のメリット！昔は山といえば夜行電車が普通だった。
戦国時代の天正12年(1584)12月末、富山城主の佐々成政が浜松の徳川家康に会うために越えたのがこのザラ峠。400年以上前の厳冬期にここを越えたというのは信じがたい事だが、事実らしい。
食事はすべて自炊と行動食の予定だったが、ズブ濡れで身体も冷え切っているので、休憩料代わりにうどんを食べる。暖かい食堂で温かいうどんを食べて元気が出て来た。
北薬師岳(2,900m)。ここまでくれば小屋まであと80分。標識には「ここで雨なら稜線風雨 荒天時薬師越え厳し」とあるが、風はあまり強くないし、スゴまで戻るより薬師越えのほうがずっと近いので、迷わず前進を決定したのだが・・・・。
薬師岳(2,926m)。滑りやすい岩場を抜けて薬師岳に登頂。佐々木さんは今回最初の百名山だ。風は強いが、あとは40分下るだけなので、一安心したのだが・・・・。
薬師岳山荘。小屋まであと10分くらいのところで猛烈な風に阻まれ、命からがら薬師岳山荘(2,701m)に避難。薬師峠(2,294m)のテント場まで下る気力が無いので、ここに泊まることにした。
オトギリソウ(弟切草)。この草を原料にした秘薬の秘密を漏らした弟を兄が切り殺したという平安時代の伝説によるもの。この不吉な伝説のため、付けられた花言葉も「怨み」「秘密」と縁起が悪いが、薬草でもある。
急坂ガンバレ！この先どんな道が待ち構えているのだろうか？ 1,900mの薬師沢小屋から2,500mの雲ノ平まで標高差600m！
とても広いが殆どが岩だらけで、設営できる場所は限られている。とても50も張れるとは思えないが、空いているので良い場所が空いていた。
昨日新穂高から100�箸離競奪�を背負ってきた2人の若者。予定を聞くと、我々の逆方向で、黒部五郎経由で室堂まで行き、剱岳を往復して室堂に下山するそうだ。
双六小屋から7時間45分、正味5時間35分で到着。標準タイム5時間55分なので、縦走5日目にしては上出来だ。
槍沢ロッヂ(1,820m)。槍ヶ岳山荘から3時間15分、正味3時間05分で到着。コースタイムは3時間30分なので、ヘロヘロな割には頑張っている。
装備
| 個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ソフトシェル
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
サンダル
ザック
ザックカバー
サブザック
行動食
非常食
飲料
地図（地形図）
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ナイフ
カメラ
テントマット
シェラフ
ヘルメット
|
|---|---|
| 共同装備 |
調理用食材
調味料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
ポール
テント
|
感想
8月15日 晴れのち曇り
いよいよ1週間のロングトレイルに出発だ。いつもは車で夜に出発するが、今回は日中に電車で登山口に向かうのだ。登山口と下山口が遠く、電車やバスで行く山行は百名山完登の2011年8月の薬師岳・黒部五郎岳・水晶岳の西銀座ダイヤモンドコース縦走以来だ。
最初の計画では夜行バスで富山に行くことにしていたが、長期山行で体調を整えて出発したいので、前日日中に移動し、夕方室堂に入って雷鳥沢で1泊する事にしたのだ。
ザックの総重量は約23kg。1週間のテント泊山行にしては軽量で、前回の2泊3日の八ヶ岳山行とほぼ同じなのだ。まあ、食事はかなり質素なのだが・・・・。
天気は晴れて暑い。廣子に送ってもらい、君津駅で佐々木さんと合流。
9:52発の千葉行きに乗り、蘇我で乗り換えて11:16東京着。東京から富山までは、今年3月14日に開業した北陸新幹線で行くのだ。11:44発の「はくたか261号」は最新鋭のE7系。先頭車両はグリーン車より上の「グランクラス」。東京〜富山間は運賃・指定席券込みで12,210円。グランクラスは25,580円。2倍以上するのでおいそれとは乗れないが、飛行機のビジネスクラスに比べれば安いので、いつかは乗ってみたい。
普通車でも座席間隔が広くて快適だ。コンセントも全ての座席毎に付いている。
東京駅の弁当スタンドで「牛肉弁当」とビールを買って乗車。ザックが大きいので車両最後尾の座席を予約し、座席後方のスペースにザックを置いた。
車中でビールを飲み、弁当を食べながら行けるのは電車山行の良い所だ。
東京から約2.5時間、14:18分に富山駅に到着。新幹線開業に合わせて新しくなった駅舎はとても綺麗だ。昨年9月に剱岳の帰りに熊本さんを送ってきた時には未だ工事中だった。
富山地方鉄道への乗換時間は約30分。まずは地鉄の切符売場に行き、電車とケーブルカーの通しチケットを買おうとしたが、それは午前中しか取扱が無いとのこと。午後の入山者は少ないので、通しのチケットは無いのだ。しかし、立山駅でのケーブルカーへの乗換時間は6分しかないので、通しチケットが無いと時間的にギリギリだ。富山〜立山は1,200円。
夕食は富山駅周辺のコンビニで買おうとしたが、なんと南口周辺にはコンビニもキオスクも見あたらないのだ。北口にコンビニが有るのは判っているが、それでは時間的に間に合わない。
やむなくお土産屋の一角で売っているおにぎりを3個買って14:49発の立山行きに乗車。
富山地鉄は久留里線のようなローカル線でワンマンの2両編成。座席は半分以上空いている。乗客は大半が観光客と登山者だ。
車両はワンマンカーで、後方の車両の後部には座席が無く、荷物置き場になっている。これは大きなザックを持ち込む登山者が多いからだろう。
富山地方鉄道の駅は大半が無人駅で、無人駅では最前方の運転席横のドアしか開かないようになっている。
15:54立山駅着。駅周辺の駐車場はほぼ満車だ。
16:00のケーブルカーへの乗換時間は僅かに6分なので、駅の外にあるチケット売場に走ったが、幸い窓口は混雑しておらず、無事16:00のケーブルカーに乗車できた。
立山ケーブルカーには大きな荷台が付いているが、乗客が少ないので大きなザックも車内持込みになった。ケーブルカーの乗車率は約8割程度。
美女平でケーブルカーを降りる客に比べて入れ代わりに下山する客は満員だ。
美女平で高原バスに乗り換えて室堂へ。バスの荷室にザックを預けるには荷物代300円を支払う。バスの乗車率は7割程度。車窓からの絶景を楽しみにしていたが、ガスで何も見えない。
17:00室堂着。この時間になると観光客も登山者も下山もしくは宿・テント場に入っているので、室堂ターミナル周辺は人影もまばらだ。一部青空も見えるが、曇りだ。身支度をし、「立山」の大岩の前で記念撮影をして出発。今日は雷鳥沢キャンプ場までの1時間あまりだけだ。
みくりが池を過ぎる頃にはガスが切れて青空が見えて来た。明日は期待できるかも。
雷鳥沢に下る石畳の道から見えるテント場はあまり混雑していない。これなら良い場所に設営出来そうだ。18:00テント場に到着。上から見るとガラガラに見えたが、近くでみるとそこそこ混み合っている。数えてみるとざっと100張ある。
まずは広くて平坦で石が無い場所を探して場所決めたいとする。石畳通路の交差するテント場ほぼ中央付近の場所に決める。テーブルも近いので良い場所だ。
場所を決めてから管理事務所でキャンプの申込み。幕営料は1人500円だが、2泊目以降は1,000円均一で、例え半年でも1,000円なのだ。これは剱沢も同様なのだが、良いシステムだ。
テント設営後、近くの山小屋までビールを買いに行く。キャンプ場の管理事務所には売店はなくビールも売っていないのだ。こんな人気のキャンプ場なのだから、せめてビールの自販機くらいあっても良いと思うのだが・・・・。
一番近いのは雷鳥沢ヒュッテ。なんとも言えない独特の形をした小屋だ。山小屋のビールは350ccで500円が相場だが、ここは500ccが500円とリーズナブルだ。
ビールを買ってテントに戻り、近くのベンチ・テーブルで富山駅で買ったおにぎりを食べた。
明日からの長い縦走に備えて20時就寝。外を見ると満天の星が輝いている。テント内14℃だがTシャツとフリースで寒くはない。
8月16日 晴れのち曇り
4:10起床。ピーカン、気温は9℃、寒い。昨夜寝る時は寒くは無かったが、夜中は少し寒くなったので、ライトダウンを着た方が良かった。
コーヒーとカレーの朝食。カレーは食器の汚れが取りにくいので最終日に食べる事が多いが、今回最も重い食材なので早く軽くする為に、最初の食事にした。食器にラップを被せて汚れが付かないようにした。ご飯は2人でα米1袋にしたが、高齢者2人には丁度良い。
6:15出発。雷鳥沢から一ノ越に向かうルートの案内がどこにも無い。剱御前方面の案内表示はあるのだが、メジャーなルートである一ノ越への表示が無いのは不思議だ。地図を見ると称名川を渡ってから右に行くようだ。
称名川に架かる浄土橋を渡って右に少し行ったところに真砂岳に向かう道との分岐があり、右に折れると一ノ越への道になる。地図上では一ノ越直下まで分岐は無く一本道なのだが、何ヶ所か分岐があり、ちょっと迷ってしまった。
一ノ越の少し下で室堂からの道と合流し、そこから5分ほどで一ノ越に到着。雷鳥沢から1時間50分掛かってしまった。コースタイムは1時間30分だが、途中で2回道を間違えたロスが大きい。
一ノ越到着時には少し雲が出て来たが、展望は良く目指す槍ヶ岳も良く見える。かなり遠くに見えるが、はたして槍まで行けるのだろうか？期待と不安が膨らむ。
お盆は過ぎているが室堂から雄山に向かう登山者は多い。しかし、五色ヶ原方面に向かう人はとても少ない。一ノ越山荘の室堂側の裏手が五色ヶ原方面への道になっている。
高度を上げていくと別山の尾根越しに剱岳が見えて来た。やはりカッコ良い。
浄土山に向かって登って行くと、浄土山と獅子岳の鞍部に出る。鞍部には無線施設らしい塔と建物があるが、何の施設かは不明だ。
鞍部は広く、ベンチがあって休憩には良い場所だ。薬師岳や五色ヶ原も良く見え、五色ヶ原山荘が意外に大きく見える。
獅子岳に向かう稜線沿いにはお花畑が多く、ハクサンフウロやトリカブトを始め色々な高山植物が咲き乱れていてとても綺麗だ。お花畑で五色ヶ原方面から来た山ガール2人とすれ違ったが、すれ違う登山者はとても少ない。薬師岳〜立山間は小屋の間隔が遠いので、その前後に比べて入山者が少ないようだ。
獅子岳の手前には大きな雪渓があるが、その雪渓ですれ違った8人くらいのパーティーのほとんどは何故か長靴を履いていた。山小屋関係者は長靴で登る人が多いが、そんな感じでは無かった。
眼下には黒部湖が見え、その向こう側には後立山連峰が連なり、中央に針ノ木岳が聳えている。
獅子岳を過ぎる頃からガスが出てきて展望が利かなくなった。五色ヶ原まで稜線漫歩かと思っていたが、ハシゴやクサリがたくさんあった。
獅子岳から下った鞍部がザラ峠(2,348m)。戦国時代の天正12年(1584)12月末、富山城主の佐々成政が浜松の徳川家康に会うために越えたのがこのザラ峠。400年以上前の厳冬期にここを越えたというのは信じがたい事だが、事実らしい。このような歴史的な場所なのだが、地味な道標があるだけで、何の説明書きも記念碑も無いのは意外だった。
ザラ峠でソロの青年に出会ったが、彼も我々同様に明日の行程を迷っていて、今日スゴ乗越まで行くか悩んでいた。
ザラ峠から30分ほど行くと五色ヶ原山荘とキャンプ場の分岐があり、道は木道になっている。
キャンプ場に直行したいところだが、キャンプの受付は山荘なので、直進して五色ヶ原山荘に向かう。途中の大きな岩にペンキで「ファイト」と書かれている。こんなのは珍しい。
五色ヶ原は広い台地状の草原でとても気持ちの良いところだ。花も多い。分岐から15分ほどで五色ヶ原山荘に到着。定員120人にしては大きな小屋で、風呂もあるらしい。風呂があるということは水が豊富なのだろう。
テントの受付をしてビールを購入する。幕営料は500円、ビールは35缶が600円と少し高いが、非常に奥深い小屋なので、やむを得ない。
小屋の前にはテーブルとイスがあるのだが、イスは山らしくないもので中々ユニークだ。
小屋の前でビールを飲んでいると薬師方面からトレイルランナーが走って来た。いったいどこから来たのだろうか？荷物は殆ど持っていない。折立から室堂まで1日で走れるのだろうか？
日が陰っていると少し寒いが、日差しが出て来ると暑いくらいで気持ち良くビールが飲める。
小屋の前で1時間ほどのんびりしてからテント場に移動する。五色ヶ原のテント場は小屋から10分とかなり離れている。ハクサンイチゲやチングルマなど、お花畑の気持ちの良い草原の中の木道を15分ほど行くとテント場があった。
テント場は空いていて10張もない。公称50張なので、好きな所に張れるが、比較的広くてベンチが近くにある場所に設営する。
トイレは意外に大きいが、あまり綺麗ではない。小は便器が無く、横長の水路のような、昔の小学校のトイレのようなモノだった。個室はステンレス便器だ。
まだ時間が早いのでコーヒーブレイク。いつもはレギュラーコーヒーだが、ゴミの重量を減らすために今回はインスタントコーヒーだ。そうこうしているうちに青空が広がり、日差しが出て来た。
今日の夕食は「サッポロ一番ソース焼きそば」。2個同時には作りにくいので、1個づつ2回に分けて作る。最初は具なし。具は無くても美味しい。2回目はフリーズドライのラーメンの具を入れたが、ラーメン用なのでワカメが入っていてそれが水分を吸ってしまい、途中で水を足した。焼きそばに関しては具は無い方が良かった。
夕方、小屋の泊まり客らしい人が4人歩いて来たが、女性2人はロングスカート姿でかなり場違いなファッションだ。
ガスが晴れて獅子岳、龍王岳、そして後立山の稜線が見えて来た。テントは夕方には15張になっていた。
明日は薬師峠までの12時間以上の長丁場。2時起床、4時出発なので早めの19時に就寝する。昨夜は少し寒かったので、ライトダウンを着てシュラフに潜る。
8月17日 雨
2:00起床。今日は今回の縦走で最も長距離、長時間の最難関コースだ。しかも天気は雨。天気は予報通りの雨で、昨夜22時頃から降り続いているが、寒くは無くライトダウンは着ているもののシュラフのジッパーは下げたままで平気だった。
朝食と言うか？夜食と言うべきか？海老ピラフとマグヌードルを流し込む。未だ身体が山時間に馴染んでいないので、この時間には食欲が湧かない。
パッキングをしてカッパを着てからテントを撤収する。あたりは未だ真っ暗だ。
4:15ヘッドライトを点けて出発。雨で濡れた木道で滑らないように気をつけて歩く。木道なので真っ暗でも道に迷う心配はない。
稜線に出る頃から明るくなり、鳶山あたりで夜が明けた。雨は小降りだが、止む気配もない。風が弱いのが救いだ。
携帯はほぼ通じないと思っていたが、なんと鳶山では繋がった。近くにアンテナなど有るとは思えないのだが、不思議だ。今日天気が悪化して薬師まで行けずにスゴ乗越泊りになる可能性もあるので、LINEで聖に伝えた。
気温は15℃と予想外に低い。動いていれば寒くはないが、止まると寒い。
越中沢岳、スゴの頭、スゴ乗越とガスで展望のない中をアップダウンを繰り返しながらひたすら歩く。
スゴ乗越小屋のテント場は雨で冠水している場所が多く、あまり環境は良くない。テントは1張だけあった。
10:50スゴ乗越小屋着。五色ヶ原から6時間30分掛かったが、疲労困憊でも無く時間的にも薬師まで行けるが、身体が冷えているので小屋の中で休憩しながら考えることにする。
小屋の前に屋根付きの小さな休憩所があるので、濡れたザックを置いて小屋に入る。スゴ乗越小屋は定員50人のこじんまりとした小屋だが、アットホームな良い感じの小屋だ。
縦走中のランチは原則として行動食なのだが、休憩料代わりに食事を注文する。
カレーとうどんがあり、どちらも美味しそうだが、うどんにした。700円なのでそれほど高くない。カレーも1日5〜8食限定の手作りカレー「トマトとトーフのスパイシーカレー・スゴ乗越風」で美味しそうだ。
食堂は小屋の奥にあり、ストーブがあって暖かい。食堂には先客が3人いたが、1人はテント場に幕営している人らしい。
うどんはなかなか美味しく、身体も暖まったので、予定通り薬師峠まで行く事にした。
食事中一瞬雨が止み、青空が見えたので、天候回復を期待さはたが、直ぐにまた降り出してしまった。
小屋を出て40分ほど経った頃に学生らしい5人パーティーとすれ違ったが、「薬師岳は風が強いので気をつけて下さい」と言われた。その時はあまり気にしなかったが、後で思い知らされる事になるとは知る由もなかった。間山を過ぎる頃から風が強くなった。
15:35北薬師岳に到着。ここまで来れば薬師峠まで2時間強なので、明るいうちに到着出来そうだ。
山頂の道標には「ここで雨なら稜線風雨、荒天時薬師越え厳し」と書かれている。しかし、北薬師岳から薬師岳山荘まで1.5時間だが、スゴ乗超小屋までは2時間掛るので、風もそれほど強くないので迷わず前進する。
薬師岳にかけて風は強まったが、危険を感じるほどではなかった。
16:40薬師岳に到着。佐々木さんにとっては今回1つ目の初百名山登頂だ。
風は強いが歩行には支障ない。写真を撮って直ぐに下山を開始する。
薬師岳から薬師岳山荘までの中間点付近から風が猛烈に強くなり、まともに歩く事が困難になった。時々風に押し倒されて転倒する。
ザックの上に挟んでいたテントが吹き飛ばされたが自分では気付かず佐々木さんが拾ってくれた。
周辺には風を避ける岩も無く、風が息をつく事もない。辛うじてハイマツの陰に倒れ込んで休憩するが、息をするのも困難な程の強風だ。このままクギ付けになったら低体温症で死んでしまうだろう。なるほど、夏山での疲労凍死はこうして起きるだなと思った。ツェルトを被ったり乾いた服に着替える事も不可能だ。ツェルトなど広げた途端に吹っ飛ばされてしまう。
眼鏡さえ風で飛ばされそうになり、かけていられないので、ポケットにしまった。
iPhoneのGPS登山地図で現在位置を確認すると小屋まで200〜300mの位置のようだ。
まだ身体は動くし、意識もはっきりしているので、低体温症にはなっていないと思うが、このまま留まっていたら生命の危険がある。
這う様にしてなんとか薬師岳山荘に到着した。薬師峠のキャンプ場まであと1.5時間掛るが、身体はパンツまでスブ濡れで冷え切り疲労困憊なので、今日は予定を変更して薬師岳山荘泊りにする。
小屋に入って直ぐに玄関脇の乾燥室で濡れた物を出し、ストーブで暖をとった。
小屋に着いても暫くの間、呼吸が苦しかった。恐怖と緊張と安堵感で自律神経の何かがおかしくなっているのだろう。30分くらい経ってようやく落ち着いた。
着いた時間も遅いし、食料を減らす為にも素泊にする。素泊り料は6,300円。
この小屋で自炊する客は余りいないらしくて自炊室はなく、玄関の片隅で自炊する。水場はなく、1��200円で2�塙愼�する。今夜のメニューは松茸ご飯、ツナ缶、味噌汁、それと佐々木さん差し入れのたくあんだ。
身体も暖まったのでビールが美味い。生きてて良かった！ビールは35缶が700円と高いが仕方ない。
玄関脇の談話室にはテレビがあり、天気予報を流しているが、明日は回復するようだ。
夕食が終わって少しすると20:30の消灯時間になり、2階の大部屋の一角の布団に潜り込む。薬師岳は百名山で人気の山だが、悪天候のせいか今夜はそれほど混雑しておらず、布団は1人1枚だ。
あれほど吹き荒れていた烈風は、寝る頃には収まっていた。
今日は今までの40年の登山経験の中で最も危険を感じた。風で生命の危機に陥るとは思わなかったが、良い経験になった。
雨の中で現在位置を確認する為にiPhoneを使っ為か、「SIMカードが認識出来ない」というメッセージが出るようになってしまった。電源を入れ直しても治らず、どうも重症らしい。でもキャリア通信以外の機能は正常のようなのでGPSによる位置把握は出来るので安心だ。
カメラもサブカメラのSONY・DSC-HX10Vが、水濡れでおかしくなってしまった。一応動くのだが、電源を切ってもいつの間にかまた入ってしまうのだ。そして、撮影した画像のモニターが出来ないのだ。
Nikon・D90はジップロックに入れてザックにしまっていたので無事だった。
8月18日 曇りのち晴れ
4:00起床。大半の人は3:00過ぎに起きて山頂に日の出を見に行ったようで、部屋に残っている人はは殆どいない。
4:30頃に外に出ると薬師岳のシルエットが見えた。星も少し見える。これは天気が期待できる。
昨夜同様に玄関で朝食自炊。が、昨夜と違い泊まり客が出入りするので、遠慮がちに食事をする。今日の朝食は赤飯と味噌汁。
山頂から帰ってきた人達によると、ガスで何も見えなかったとのこと。
6:00出発。ガスで薬師岳はもちろん見えず、周囲の展望もなし。少し下るとガスの切れ間から少し周囲が見える。薬師峠から来たと思われる若者パーティーとすれ違う。
薬師平は花が綺麗だ。相変わらずガスだが、時々ガスが晴れると薬師峠や太郎平が俯瞰できる。
途中、旅行会社のツアーで来ている20人以上の中高年パーティー2組とすれ違ったが、自分の力では登れずに引っ張り上げられている人もいて、このまま最後まで行けるのだろうかと思う。
7:10薬師峠着。さすがにテントは殆ど無い。トイレはとても綺麗で、洋式なので疲れた脚でも楽ちんだ。水場も水量豊富で良いテン場だ。この頃には青空も見えて来た。
薬師峠〜太郎平間は花が多くてとても綺麗だ。太郎平は折立登山口、薬師岳、黒部五郎岳、雲ノ平の4方向への交差点にあたり、交通の要衝だ。
太郎平から薬師沢小屋までは約400mの下りだが、その大半が木道だ。ここの木道は滑り止めの溝が切ってあり、さらに滑り止めのザラっとしたプレートの入っている木道も多くてとても安心して歩ける。
薬師沢小屋までの間に徒渉点と言われる地点がが3箇所あるが、みな立派な橋が架かっているので、徒渉ではない。おそらくかつては橋がなく本当の徒渉点だったものが、橋が出来てからも名前だけそのまま残っているのだと思う。
薬師沢小屋への下りは大半が笹原でなかなかに気持ちが良い。
太郎平から約2時間30分で薬師沢小屋に到着。その名の通り薬師沢の畔に建っている。60人収容の小さな小屋だが、薬師沢はイワナなど渓流釣りで有名らしく、釣り客も多いようだ。
但し、薬師沢小屋は「黒部源流のイワナを愛する会」の原点となった小屋で、イワナ料理は出さないとのことだ。う〜ん、なるほど。
小屋で25分間と少し長めの休憩を取った後、今回の縦走で最も激しい急登に挑む。雲ノ平までの標高差は実に600mもあるのだ。
薬師沢に架かる吊橋を渡り、一旦河原まで降りて少し下流に進むと高天原と雲ノ平の分岐がある。分岐を右に折れるとすぐに急登が始まり、道標に「急坂ガンバレ！」と書いてある。こんな励ます道標は珍しい。
しかし、この登りは凄かった。登山道は道というより水の無い沢そのもので、大きな岩の積み重なった急登で、殆どが両手を使って登るのだ。それが延々と2時間続くのでとてもきつい！
2時間のきつい登りをひたすら登り続け、空が広くなったところで木道が出現する。「木道末端」だ。木道末端から少し行くと雲ノ平の西端「アラスカ庭園」に到着する。
雲ノ平は起伏の少ない広大な台地で、大半が這松で見晴がよく、周囲には薬師岳、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳と4座の百名山に囲まれている。そこはここまでの苦労が報われる、まさに「雲上の楽園」だ。
アラスカ庭園から雲ノ平山荘までは約1時間。結構遠いのだが、足元は全部木道で歩きやすいし、展望も良いので楽しい1時間だ。
雲ノ平山荘に着いてテントの受付をする。幕営料は1人1,000円と高い。山荘内部はなかなかオシャレな雰囲気だ。
ビールは4銘柄あるが、一番搾りやスーパードライなどポピュラーなものは無い。一番高い900円の地ビール「信州ナチュラルビール」で乾杯する。
同じく小屋の前でビールを飲んでいた山ガール2人と話をしたが、彼女らは昨日新穂高温泉から入山し、今日は双六小屋から来て、明日折立に下山するとのこと。昨日の新穂高は土砂降りだったそうだ。
ここも五色ヶ原や薬師峠と同様に小屋からテン場までが離れていて、約25分も掛かる。ビールを買いに戻るのは面倒なので、夕方用のビールを買ってからテント場に移動する。
テント場はとても広く公称50張だが、大きな岩が多く平坦な場所が非常に少ない。それでも先着のテントが少ないので、比較的広い場所に決めた。
トイレは立派なバイオトイレだが、あまり綺麗ではない。水場は傾斜の付いたテント場の最上部近くにあり、我々のテントからは少々遠いが、水量豊富で冷たくて美味しい。
テントを設営する前に雨でズブ濡れになったテントを拡げて乾燥させるが、日差しが無くあまり乾かない。
テントを乾かしつつビールを小さな沢に入れて冷やし、水場まで行ってそうめんを茹でる。湯切りには百均で買ったネットを使ったが、これがとても具合が良い。
冷たい水で締めたそうめんはすこぶる旨い。ワサビも薬味もなにも無く、めんつゆだけなのだが、とても旨いのだ。大自然の絶景の中で食べる「山ご飯の魔法」のお陰だろうか？
そうめんは元々今日の昼食の予定だったが、昨日の宿泊地が薬師岳山荘になって到着が遅れたため、夕食にスライドした。
そうめんを食べてからテント設営場所に戻り、テントを設営した。あとはビールを飲んで寝るだけだ。
冷たい沢の水で冷やして冷え冷えになったビールを飲んで、19:30に就寝。外は曇り、テント内14℃だが、Tシャツとフリースでも寒くはない。しかし、夜中の寒さに備えてライトダウンを着て寝たが、シュラフのジッパーは下げたままにした。
8月19日 晴れのち曇り
3:00起床。星空だ！テント内12℃。
朝食は昨日の夕食のはずだった豚角煮丼がスライド登板。久々の肉なので嬉しい！こんな時間に食事をするのにもだいぶ慣れて来た。
ピーカンでは無いが、黒部五郎岳の上空の雲が朝焼けに染まって綺麗だ！
今日は黒部源流経由で三俣山荘に行く予定だったが、久々に天気が良さそうなので、黒部源流には降りずにより展望の良い鷲羽岳経由で行くことにした。出発時の気温は8℃とちょっと涼しい。
まずは雲ノ平山荘方面に10分ほど戻ってから祖父(じい)岳に登る。祖父岳の中腹で黒部源流に下る道と分かれ、山頂を目指す。
テント場から50分で祖父岳に登頂。山頂からは雲ノ平からも見えた薬師岳、黒部五郎岳、水晶岳に加えて、鷲羽岳、笠ヶ岳、槍・穂高、そして立山・剱岳まで360度の大展望が素晴らしい。
特に黒部五郎岳は角度が変わって大きく口を開いた「五郎のカール」がカッコ良い。
祖父岳では男女2人パーティーに出会った他は誰にも会わなかった。
祖父岳からワリモ北分岐に向かう途中で三俣山荘・夏山診療所スタッフの3人に出会った。香川大のドクターと岡山大の男女学生2人だった。夏の間4日ずつ8班で交代して運営しているそうだ。
お世話にはなりたくないが、彼らがいるお陰で安心して山に来られるのだ。有難い。今年は虫刺されが多いそうだ。
裏銀座の稜線に出会う「ワリモ北分岐」の手前にある「岩苔乗越」。ここは鷲羽岳、高天原、祖父岳、黒部源流(経由三俣山荘)の交差点で交通の要衝だ。それまで殆ど人と会わなかったが、岩苔乗越に着いた途端に高天原と黒部源流と鷲羽岳方面からの人が集まってきた。
ワリモ北分岐で裏銀座の稜線に合流した途端に賑やかになる。そこから鷲羽岳までは1時間の登り。この頃には青空が広がり、気持ちの良い稜線歩きだ。
9:25鷲羽岳に登頂。佐々木さんにとっては今回2座目の初百名山だ。鷲羽岳からは槍ヶ岳が正面に見えて一層素晴らしい！気温18℃だが、晴れているので気持ちが良い。
山頂で20分ほど絶景を満喫してから三俣山荘に向かって約400mの急坂を下る。途中黒部源流が見えるが、いつかは行ってみたいものだ。
三俣山荘は70人収容で、雲ノ平山荘、水晶小屋と同じ経営だ。
鷲羽岳の下りで脚を使い、少々疲れてしまったので、三俣山荘で35分間の大休止。小屋の前には水場もあって休憩には最適だ。稜線上にありながらも水が豊富で良い立地だ。小屋の2階には展望レストランがある。
三俣山荘から今日の幕営地・双六小屋までは三俣蓮華岳と双六岳の山頂を通るルートと両山頂を巻くルートがあるが、展望の良い山頂経由で行く。
三俣山荘を出てテント場を抜けて三俣峠を目指すが、テントの回りに全装備を拡げているパーティーが居た。いったい何をしていたのだろうか？
三俣峠からは結構な急登をひと登りして三俣蓮華岳の山頂に到着。三俣山荘から約1時間、標高差は約300mだ。
三俣蓮華岳に着く頃には雲が広がってしまった。そして双六岳に着く頃にはすっかりガスに包まれ、展望ゼロになってしまった。
山頂部が平坦で槍ヶ岳に向かって長い直線の登山道を歩くのを楽しみにしていたのだが、今回はガスで何も見えずに残念だ。ほんの一瞬だけ槍の山頂が見えたが・・・・。
三俣蓮華岳から双六小屋にかけての道標はみな真新しく、現在地や行き先が判りやすく表示されていてとても良い道標だ。
15:25双六小屋に到着。雲ノ平から合計10時間、休憩抜きで8時間。天気が良かったので快適ではあったが、流石に疲れた。最後の下りはヘロヘロだった。
今日のコースは標準タイム6時間40分のところ、8時間も掛かってしまった。
双六小屋は新穂高温泉から1日で来られるので、大勢の登山者で賑わっている。双六小屋は200人収容の大きな小屋で、黒部五郎小舎、鏡平山荘、わさび平小屋と同じ経営だ。
現オーナーの小池潜さんは新穂高温泉から双六小屋に至る「小池新道」を開いた小池義清さんの息子さんだ。
双六小屋のテント場は小屋と双六池の間にある広い平坦地で、公称60張とされているが、100張でも余裕だと思う。今日は約50張だが、まばらな感じだ。
ツェルトが2張あった。ツェルトは本来はビバーク装備なのだが、最近あちこちでツェルト泊を見かける。ウルトラライトキャンパーの間ではツェルト泊が流行しているのだろうか？
双六小屋のトイレはとてもきれいでしかも個室は全て洋式なのが素晴らしい。ウォシュレットがあれば最高なのだが、山のトイレにウォシュレットが付くのはいつだろうか？
双六小屋も三俣山荘と同様に稜線上にありながらも水が豊富。なので、今夜のメニューはパスタ。パスタは軽くて良いのだが、水が豊富な所でないと作れない。
パスタはラップの芯に入れて来たので無傷だ。湯切りは昨日のそうめん同様に百均のネットでとても具合が良い。
パスタの中でも一番好きなペペロンチーニ。パスタソースにはニンニクのトッピングが付いているが、さらに追加でフライドガーリックをトッピング。ニンニクパワーで元気が出る。
小屋のテレビの天気予報によると、明日・明後日ともに曇り一時雨。降水量は1mm程度らしいので、大した降りではない。富山、岐阜、長野どこの予報も同じなので、晴れは期待出来ない。
明日は出発時に小雨程度なら予定通り槍に登り、本降りの雨だったら新穂高温泉にエスケープする事にする。20:30就寝。空には星も出ている。天気予報が外れますように！
8月20日 曇りのち雨一時晴れ
4:00起床。曇り。晴れてはいないが、ガスってもいない。
昨夜はTシャツ、フリース、ライトダウン、シュラフで寒くは無かった。
朝食はラーメンライスの予定だったが、それほど食欲がなくラーメンのみに変更。ラーメンは「マルタイ棒ラーメン」。かつては山で良く食べたが、今回久しぶりに食べた。これがすこぶる旨い。今回の6泊12食のなかで佐々木さんに最も好評だったのが、このマルタイ棒ラーメンだった。
テントを撤収していると、近くで昨日新穂高温泉から100�箸梁膩織競奪�を背負って登って来た若者2人が撤収していた。話を聞くと、我々とほぼ反対で剱岳まで行き、室堂から下山するとのこと。薬師岳の風に気を付けるように伝えた。
天気予報では雨模様だが、高曇りなので予定通りに槍に登ることにする。槍の肩までは標高差460m、5時間の登りだ。
時間的にはあまり急がないので、遅めの6:20に出発。テントは大半出発していて残りは僅かだ。
樅沢岳も西鎌尾根もアップダウンを伴った急登の連続できつい。途中に硫黄乗越、左俣乗越、千丈乗越と3つの峠を越えるのだ。後発の人に次々に追い抜かれるが、マイペースで登る。
雲は厚いが高曇りなので展望は良い。鏡平小屋も良く見える。
ほぼずっと槍ヶ岳が正面に見え続けるので、きついが楽しい登りだ。花も多く目を楽しませてくれる。
左俣乗越で小雨が降り出し、カッパの上だけ着てザックカバーを被せる。
千丈乗越で四角い穴の空いた古銭を1枚拾った。あとで調べると「天元聖寶」という千年前の中国の古銭だった。千年前の物ならお宝かと思いきや、350円くらいらしい。
雨は降ったり止んだりで、一時は日差しも出たが、晴れることは無かった。
11:55槍ヶ岳山荘に到着。双六小屋から4時間55分掛かったが、標準タイム通りだった。随分追い抜かれたが、タイムはそこそこだった。
過去何度もテン場が満席で幕営出来なかったが、今回はガラガラだ。槍のテン場は稜線上のとても狭い所を仕切ってある。受付時にテントの大きさを申告して場所の指定を受けるのだが、我々の指定されたサイトは「0」番。幕営料は1,000円。
行ってみると0番は長さはギリギリだが、幅は少し足りない。四隅の一角には地面が無く、張り綱もまともに張れない。それに地面は斜めっている。
正直に3人用と申告したのだが、8人用と言えば良かった!? まあ、それでも憧れの槍のテン場に初めて張れたので嬉しい。
西鎌尾根は静かだったが、ここは槍沢から大勢の登山者が続々と上がって来て大賑わいだ。
13:15槍の穂先にアタック。ガスっているが、雨は降っていないので今のうちに登ってしまう事にした。
幸いあまり混雑はしていない。槍に取り付いている人は大半がヘルメットを被っていて、その多くは小屋のレンタルヘルメットだ。
槍は3年ぶりだが、適度な緊張感を強いる岩登りが楽しい。
13:15穂先に登頂。少し前から小雨が降り出してしまったが、そこそこ展望があり、虹も見えた。
佐々木さんは今回3座目の初百名山登頂だ。
無事に槍ヶ岳登頂を果たし、小屋の前のテラスでビールで乾杯。しばらくするとガスで何も見えなくなってしまった。我々の登頂タイミングは正解だった。
ビールを飲みながらふと東の方を見ると、富士山がクッキリと見えた。その後ガスは出たり切れたりだが、大槍は登頂者の行列が出来ている。
ここのトイレもとてもきれいで、しかも個室は洋式でとても良い。
水は天水なので、宿泊者は無料だが、テン泊者は1��200円だ。セルフサービスで水を買うが、蛇口とテーブルの間隔が狭いので、オイル入れのような容器で水筒に移し替える。
夕方になるとテン場はそこそこ埋まって来た。殺生ヒュッテのテン場は僅か4張しかなく、ガラガラだ。
夕食は五目ご飯と味噌汁の予定だったが、今朝の棒ラーメンが思いの外旨かったので、予備食のラーメン2食を味噌汁代わりにした。これも旨い！
ご飯はα米1人前を2人で分けて丁度良いが、ラーメンは1人前がツルっと食べられる。今後も棒ラーメンを愛用しよう。
夕方になって雨は降ったり止んだりだが、風が強くなった。19:00就寝体勢に入る。
20:30小雨の中傘を差してトイレに行った。テント内10℃、風はあまり強くはない。
8月21日 雨のち曇り
4:00起床。あまり良く眠れなかった。昨夜からの雨が降り続いている。
ついに最終日。今日は上高地までひたすら下るだけだが、標高差1,500m、距離22kmの長丁場だ。
朝食は赤飯と味噌汁。赤飯は大好きだし、大縦走の完遂を祝っての祝い飯でもある。
コーヒーを飲みたがったが、昨日で全て飲み尽くしてしまった。残念！次回は多めに持ってこよう。
雨の中、カッパを着て撤収。隣のソロの人は既に出発していた。
撤収後、トイレに寄り、小屋でテントタグを返却し、水を補給して5:15に出発する。
ガスで何も見えないなか、槍沢ルートをひたすら下る。カッパの下はTシャツ1枚だが、止まっていると寒いが、動いていれば少し暑いくらいだ。
最初のうちは調子が良かったので飛ばしていたら、途中から膝が痛くなってペースダウンしてしまった。やはりマイペースが大切だ。大曲あたりまでが急坂できつかった。
流石に槍沢だ。雨にも拘わらず続々と登ってくる。
ババ平のテント場ではトイレと何かの建物を新築中だった。テントは5〜6張だった。
槍沢ロッヂは中に客は誰もいなかった。濡れたザックを外の休憩所に置き、室内で休憩させてもらう。100円のセルフコーヒーがあった。インスタントだが、これは嬉しい。温かいコーヒーを飲んで、雨で萎えた気持ちが元気になった。
槍沢ロッヂからは傾斜がだいぶ緩くなる。
10:15横尾に到着。槍ヶ岳から正味4時間35分だった。横尾は涸沢・穂高と槍ヶ岳の分岐点なので、雨の中でも大勢の登山者で賑わっている。横尾でも何か建物を新築していた。なんだろう？
横尾からは車も走れる広くて平坦な「梓川街道」歩きだが、上高地までまだ11kmもあるのだ。
徳沢も雨だったが、明神に着く頃にようやく上がった。
今日のお楽しみは嘉門次小屋の岩魚の塩焼き定食だが、混雑していて30分ほど待つことに。岩魚を待つ間に、カッパを脱いでさっぱりした。
30分待ってありついた岩魚の塩焼きは、一昨年の涸沢からの帰り以来だが、いつもながらすこぶる旨い！頭から尻尾まで残らず完食した。
食後、穂高神社で無事山行終了のお礼参りをした。
小梨平に着き、渡辺画伯のテントを探しながら歩いていると、あった。声を掛けたら出て来て歓待してくれた。お茶をご馳走になり、画伯の登場するDVDを見せてくれた。
ひとつはNHKの「遠くに行きたい」で女優の竹下景子さんが上高地を訪ねて来て、画伯にインタビューしていた。もう一つは海外のテレビ番組で日本アルプスの紹介のなかで画伯をインタビューしているものだった。画伯、凄い！
今年は4/28から10月末まで滞在するそうだ。食料は自宅から宅配便で届くそうだ。3年ぶりに会えて嬉しかった。名刺も頂いたが、「春・夏アトリエ：上高地」と書かれていた。
14:35河童橋に到着。6泊7日、約80kmの縦走が終了した。きつかったが、達成感はとても大きい！
五千尺ホテル売店の前で例によって写真屋さんに記念写真を撮ってもらう。大縦走フィニッシュをバンザイで締める。
売店で「河童コロッケ(わさび味)」という見慣れないものがあったので食べてみると、非常に美味しい。今後贔屓にしよう。
14:50発の新島々行きバスは乗車率50%程度で空いている。新島々で松本電鉄に乗り換え、松本駅の2つ前の「渚駅」で下車し、500mほど歩いて「瑞祥」という温泉施設へ。ここは3年前の表銀座縦走の帰りにタクシーの運転手の薦めで来たところだ。
瑞祥の下足置き場には登山者用の大きな荷物置き場があるのだ。これは嬉しい。雨で濡れ、泥のついたザックでも気兼ねなく置けるのだ。
1週間ぶりの風呂はとても気持ちが良い。湯船に入る前に2度身体を洗い、出る前にもう一度洗った。これで電車にも気兼ねなく乗れる。
瑞祥と同じ敷地にある回転寿司「くら寿司」で夕食。1週間ぶりの生ものはとても旨い。車ではないので生ビールが心置きなく飲めるのも嬉しい。
寿司とビールに舌鼓を打っていたら、帰りの電車の時間が迫っていた。大急ぎで会計し、小走りで800m離れた松本駅まで行き、発車5分前に駅に着いた。
売店に「老松」があったので1本買って19:21のあずさ34号に飛び乗った。佐々木さんは風呂で髭を剃ったが、自分は折角伸びた髭を剃るのがもったいなくて剃らなかった。さながら下界に下りた仙人のようだが、かなり怪しい。
22:50東京駅発のアクアラインバスに乗り、24:00過ぎに我が家に到着した。
長くてきつかったが、とても楽しく充実した7日間だった。付き合ってくれた佐々木さんにも感謝したい。
今回のコース全体の標準コースタイム合計が45時間なのに対し、実際に掛かった時間は45時間15分で、ほぼコースタイム通りだった。
61歳でも23kgの荷物を背負ってテント泊をしながら、ほぼ標準コースタイムで1週間歩き続ける事が出来た事は、我ながら大したものだ。まだ当分の間は登山が楽しめそうだ。来年も長期縦走をしよう。
今回アミノバイタル・ゴールドを朝晩飲んだが、そのせいか筋肉痛は非常に軽かった。
また、ガスカートリッジのガス消費量は133gだった。12回の食事のうち11回に自分のカートリッジを使ったので、1回あたり12gで、225g入りのカートリッジのうち60%の消費だった。燃費の良いηパワーは流石だ！
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