折立 〜 雲ノ平、高天原へ


- GPS
- 32:51
- 距離
- 44.9km
- 登り
- 3,269m
- 下り
- 3,252m
コースタイム
- 山行
- 6:31
- 休憩
- 1:17
- 合計
- 7:48
- 山行
- 9:43
- 休憩
- 1:24
- 合計
- 11:07
- 山行
- 6:45
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:25
- 山行
- 5:48
- 休憩
- 1:04
- 合計
- 6:52
山域を「剱・立山」にしようか迷いましたが「槍・穂高・乗鞍」としました。どちらにも属さないこの地域用に「北アルプス中央部」が欲しいと思いました。
天候 | 10日:曇り 一時晴 のち雨 11日:晴れ 12日:雨 時々止む 13日:晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
感想欄に記載 |
その他周辺情報 | 下山後の温泉は「グリーンパーク吉峰 ゆーランド」620円(モンベル割引有り) お肌に良いぬるぬるの弱アルカリ性単純温泉。露天風呂、サウナ、水風呂有り。 この価格でこの充実ぶり、立山周辺を訪れる際には欠かせないお奨めの温泉です。 |
写真
感想
【はじめに】
雲ノ平の存在を知ったのは日本アルプスなどと同時期でした。
「日本最後の秘境」と呼ばれ、気になる存在でしたが、当時の私は3000m級の山やまに憧れていたため雲ノ平にはそれらを登り尽くしてから、のんびり行けばいいやんと考えていました。その後、山から遠ざかってしまったこともあり、いつしか忘れられた存在になってしまっていました。
時は流れて山再開10年。今年の夏遠征を検討していて真っ先に浮かんだのが雲ノ平。今の私の体力では全力で取り組める山という気がしました。それに「秘湯 高天原温泉」。今、登らないでどうする!
【折立〜薬師沢小屋】
不安定な天気が続いている中で晴れ間が期待出来そうなこの日に決め、小屋の予約を取ったものの、直前になっても期待薄の天気予報。前日移動中には琵琶湖や北陸で豪雨に遭遇。折れ掛けた心で前夜の折立泊を諦め、翌朝6時のゲートが開くと同時に進入しましたが未だ登る決心は付いていませんでした。
折立に着くとさほど天気は悪くなく、ここまで来たなら最悪、太郎平までの往復でもいいやんと登り始めました。そうなると人間欲が出るもので、太郎平で小雨が降ってきても、この程度なら明日に期待して様子見も兼ねて薬師沢小屋まで行ってみることにしました。
天気は良くなくても雪渓のトラバースや、至るところに咲く高山植物の多さに感動しつつ初めて訪れる山の魅力を感じることが出来ました。
【薬師沢小屋】
「黒部源流 山小屋暮らし」(やまとけいこ著 山と渓谷社 2019年発行)を事前に読んでいたので薬師沢小屋には興味がありました。小屋の受付を済ませ、小屋のアルバイトと思われし若い女性に「やまとけいこさんは引退されたのですか?」と問い合わせると、受け付けにおられますとの返事。あっ!あの方だったのか。イラストに出てくる自画像?をイメージしてたので全く気付いてませんでした (^^ゞ
本を書いたときはアルバイト要員だったようですが、今では小屋番に昇格されてたんですね。笑顔がステキなしっかり者の女将さんでした。今後のご活躍を願ってます。興味ある方は「黒部源流 山小屋暮らし」をぜひ購入して読んで下さい。新作「蝸牛登山画帖」も出たそうです。立ち読みはダメですよ〜(笑) 小屋で購入するとサイン入りで購入することが出来ます。
なお、薬師沢小屋(高天原山荘も)は携帯はつながりません。太郎平小屋から無線連絡出来るので、到着が遅くなりそうなときは太郎平小屋にその旨連絡して下さい。二回目に泊まった日は宿泊予約した方の到着が遅くなり心配されていました。到着しないときは探しに行くとのことでした。くれぐれも無断キャンセルしないように。
【雲ノ平、高天原】
秘境にあるステキな山小屋で渓流の音を聞きながら一晩を過ごすと、明るい朝が待っていました。今山行においてメインとなるこの日を晴天で迎えられたことは奇跡と言ってもいいかもしれません。この日、岩ゴロゴロの急登を登り、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、薬師岳、オマケの槍ヶ岳と北アルプス最深部の山やまの眺望と、一帯に咲く高山植物を堪能することが出来ました。
この日、12時間掛けて雲ノ平から祖父岳、そして岩苔乗越から高天原に下りました。荷の重さに足が上がらずスローペースとなり、予定より大幅に時間が掛かってしまい高天原山荘に着いたのは夕食1時間前。
準備して温泉往復かつ入浴の時間を考えると食事までに戻ってくるのは困難と判ってましたが、ドボンするだけでも良いから入っておきたい。これは正解でした。良い天気は長く続かず夕食から雨が降ってきて翌日も続きましたから。食事開始には10分ほど遅れてしまいましたが、小屋の人にはゆっくり食べてもらって良いよと嬉しい言葉をいただきました。この日の宿泊者は16人、少人数ならではの余裕でしょうか。ともあれ、山と温泉、最高の一日でした。
【大東新道、雨の雲ノ平】
当初計画では大東新道を通って薬師沢経由で太郎平小屋に宿泊する予定でした。大東新道は廃道化の噂もあるくらい荒れた道のようです。しかし黒部川を横に見て歩く歴史ある道だし、山を越えなくていいので時間短縮が出来ます。小屋の人の話だと増水は問題なし、雨なのでクサリ場で滑らないよう注意して下さいということでした。だから行って問題はないとは思ったのですが、前々日、薬師沢小屋側から途中まで偵察に行ったという方が、止めておいた方がいいというような話を繰り返すので不安が残りました。決めきれずに小屋を出て高天原峠で決断を迫られましたが、雨は止みそうになく、こんな日に無理をすることはないと最終的に決断しました。
今、考えてもこの決断が正しかったかどうかは判りませんが、自分で決めたんだから後悔はありません。
ただ高天原から雲ノ平に登る道は大勢の人が通る歩きやすい道だと思っていたのは大間違い。雨が降り続いて道が水浸しになっていたこともあり、薬師沢から雲ノ平への急登以上に苦労させられたコースでした。
結果、太郎平まで行くのは止めて、二回目の薬師沢小屋泊となりました。
宿泊者はたったの二名。小屋の従業員より少なかったです。この日、乾燥室が活躍したのは言うまでもありません。
【太郎平】
天気予報では曇りのこの日、目覚めるとすっかり青空。下って来た時には小雨だったコースも晴れると風景が違って見えます。晴れて欲しいときに晴れる、本当に天候に恵まれました。
太郎平に着けば後は下るだけ。気持ちも楽になって小屋前のテラスでコーヒーを飲みながらのんびりしました。太郎平に上がってくる人は殆どが薬師岳に向かいます。カップルだったり、女性ソロだったり、トレラン風であったり...雲ノ平に向かう人とは雰囲気が全く違う感じです。
好天気は続かず太郎平に着く前にガスってきましたが、ガスの晴れ間にニッコウキスゲを全景に黒部源流のオールスターを見ることが出来ました。
そして雲ノ平は目立たずひっそりと佇んでいました。6年前、薬師岳に登りに来た時に全くその存在に気付かなかった訳です。
【忘れもの】
初日、晴れ間が出てきたので日焼け止めを塗ろうと思い小袋を出そうとしてザックに入ってないことに気付きました。この袋の中には救急セットやテープ、測線バンド、その他小物が入っているので何かあった際の対応に不安が残ります。休憩地点に置き忘れたかと戻りましたが見当たりませんでした。二日目は朝から天気が良かったので、やまとけいこさんに日焼け止めを塗らさせてもらおうとダメ元で頼んでみたら、誰も使ってないという日焼け止めクリームをあろうことかチューブ毎きました頂きました。その日は一日好天だったので日焼け止めがなかったら真っ赤になっていたに違いありません。本当に助かりました。最終日の出発時に返却しましたので、もし日焼け止めクリームお忘れの際には小屋に依頼して下さい。
なお無くしたと思った小袋、車の中に転がっていました ^^;
【雲ノ平に想う】
最後の秘境と呼ばれて久しい雲ノ平。傷んで来た木道、そして秘境ならではの道とは思えぬ箇所もありこの先、何十年も経った頃にはどうなってるんだろうと感じました。
石ころだらけの水たまりや掘れた水流を跨ぐ木道のありがたさは歩いてみて初めて判るものです。その木道一本にしても一人で担げるようなものではありません。道のメンテナンスは国や地方がやるものではなく、山小屋の担当だそうです。しかし草刈りや道ならし程度ならともかく、あの木道を全部交換する財力が山小屋にあろう筈がありません。
考えてみれば、あのような大規模な木道が作れたのは、日本が元気だった頃の登山ブームやバブル期の経済絶頂期だったのではないでしょうか。
この先、国にしても地方にしても登山道を整備する余力があるとは思われません。山小屋が出来る限りの整備を行ったとしても道は荒れていくのではないでしょうか。山小屋の維持とて大変なことと思います。多くの方に雲ノ平の魅力を感じてもらうと共に、小屋料金が高い(太郎平小屋は一泊二食12,000円に対し、薬師沢小屋、高天原山荘は13,000円)のも理解出来ます。そして、ビール(350ml 700円、500ml 900円)を飲んで収益アップに貢献しましょう!(笑)
【おわりに】
4日間にわたる山行は3年前に南アルプス荒川三山等を5日間掛けて縦走して以来で、最近富みに感じるの体力低下が心配でしたが、なんとか歩き通すことが出来ました。長年、気になっていた雲ノ平を訪れることが出来、岩苔乗越では水晶岳と、太郎平では薬師岳と赤線つなぎが出来たことも収穫でした。あと薬師岳を通って立山に行くことが出来れば、馬場島あるいは欅平から、新穂高または上高地までの北アルプス赤線つなぎが完成します。行けるかなぁ。
備忘録(本人用)
水は各小屋(太郎平、薬師沢、高天原)で補充可。雲ノ平山荘でもミネラルウオーターが手に入る。計2Lほど持って行ったが、最大消費した日でも750mlは残っていた)
スマホ用モバイルバッテリー、11200mAh 1個、6800mAh 1個を持参、大きい方は2夜充電で空に、小さい方は1夜充電して少し残った状態。もう1日分余裕があった方が良かった。
デジカメ(OLYMPUS TG-5)は充電すること無く4日間使用出来た。
薬師沢小屋は高天原山荘より低地にありながら、渓流の影響から気温は低い。高天原山荘は夜でも半袖で過ごせるが、薬師沢小屋はその上に一枚フリース長袖が必要であった。
乾燥室が完備されているので宿泊者が少なかったこともあり、Tシャツ、タイツなどは水で洗って干すことが可能、着替えは半分程度で済んだ。
有峰林道は20時〜6時まで通行禁止。出来れば前日夜に入っておきたい。
コメント
この記録に関連する登山ルート

友人が、高天原小屋で今夏働いているので、気になりレコを拝見しました。
私自身は二度と雲ノ平には行き、そのうち一度は雨天だったので当時の記憶が甦って来ました。
とても丁寧なレコに感謝です。
ありがとうございました。
ご友人が高天原小屋で働いておられるんですね。お世話になりました。
小屋の方とは大東新道のアドバイスをもらった以外、あまり話は出来なかったのですが対応も良く居心地の良い小屋でした。
到着が遅くなり、お目当ての温泉をゆっくり楽しむことは出来ませんでしたが、大自然の中、他に誰もいない湯舟で過ごしたことは至福のひとときでした。
雲ノ平が日本の秘境としたら、その奥地にある高天原は秘境のまた秘境ですね。
そのような所に山小屋が存在し、そこで働いている方がおられるおかげで我々が安心して山を歩ける。本当にありがたいことだと思いました。
そんな思いもあり、自分でも呆れるほど長いレコになってしまったのですが、読んで頂いた上にコメントまで頂きありがとうございました。
https://yamap.com/activities/18433880
雲ノ平の木道荒廃は私も深刻と感じました。木道がなかったら歩けないところもあり、早急に手を打たないとルート外歩行により高層湿原の貴重な植生に大きなダメージが発生する可能性が高いと感じます。YAMAPではそうした整備プロジェクトにポイント応募するクラウドファウンディング的な仕組みがあり、私も昨年応募しました。とはいえ、かかるであろう巨額の費用は賄いきれない気がします。
整備されたらされたで、オーバーユースの課題もありますが、私たちに出来ることを探して次世代にこの貴重な雲上の楽園を引き継いでいきたいと考えます。
詳しいレポート、興味津々で読まさせて頂きました。
ピーク目指した長時間歩行があるかと思えば、小屋や温泉でまったり過ごされたりと、メリハリの利いた山行だったようで、すばらしい七日間でしたね。
レポートに登場される方のに私も知ってる人が何人かおられて、遅ればせながらあの方はそういう人だったんだと知ることが出来て二度楽しんでおります。
雲ノ平にもう行くことはもうないだろうから、山小屋での出会いは「一期一会」と思っていたのですが、今回は同じ小屋で二泊したり、二日連続でお会いする方も多くて、「一期二会」だったことも多かったです
木道の問題はこれから徐々に深刻化していくんだろうなと思います。
第一期?登山ブームの頃に山を始めた私ですが、そのころから山に入る人が多くなり、その後の日本経済の発展に合わせて山への設備投資が進み、今はその遺産を食ってる時期のように思えます。
次の世代に「雲上の楽園」を引き継いでいくために私が今すぐ出来ることは、雲ノ平とそこにある山小屋の魅力を伝えることにより多くの方に訪れてもらい、「¥」を沢山落としてもらうことかなぁと思っています。
それとは関係ないけど、「やまとけいこ」さんの新刊「蝸牛登山画帳」が本日、Amazonから届きました。小屋で立ち読みした続きを読むのが楽しみです
最後になりましたが、norizoさんは今日が誕生日? おめでとうございます、
小屋での出会いは私も同感です。思いがけず再会してより親密になったりと、旅の味わいをより深化させてくれました。秘境かつ入山者が少ない時期というのも要因だったのかなと思います。
今回初めて歩いて、木道の荒廃は待ったなしと感じました。そもそも木道がないと歩けない箇所も多く、過去の資産を食い潰してしまったその先の世界は想像したくないですね。
山小屋も環境整備の使命感はありつつやはり商業ベースの利潤追求が本音でしょうから、利用者がお金を落とすだけでは改善は限定的と想像します。
個人は無力ですが、ボランティアが自律的に回る仕組みなどを国立公園なんだから国が主導して欲しいです。
その山域に入る利用者には入山料を徴収して環境整備にあて、ボランティアには優遇措置を適用するなどやりようはあると思います。
最後にご指摘の通り昨日誕生日を迎えました。ありがとうございます。
そうですね。この場所(秘境)、この時期、この天気なればこそ得られた経験という気がします。登山者の多い山小屋って喧噪な場所という雰囲気ありますからね。
これまで木道というと尾瀬のように湿原の保護という目的で設置されたのかなという印象があったのですが、雲ノ平ではそれ以外にも歩行者が歩きやすいように設置されたと思われるものが多くありました。例えば溝状に剔られた上に掛けられたものや、ゴロゴロ石の上に掛けられたものなどですね。
木道がなかったら足の置き場にも苦労したし、通常の登山靴では水に浸かってべちゃべちゃになっていたことと思います。
道整備ですが出来れば国民の健康のため国が予算を出して貰えると嬉しいのですが、現状難しそうなので、登山協力金を徴収するというのが良さそうですね。
伊吹山では300円を徴収してますが、みなさん気持ち良く徴収箱に放り込んでいます。
お金を集めることで、整備に金が掛かることにも気付いて貰えると思います。
私も愛着がもてる地元で環境整備など次世代に引き継げる活動がしたいですが、都市域のため何をどうしたらいいか足踏み状態です。
伊吹山のように受益者負担という意味では入山料は理解が得られやすいのではないかと思います。今は有峰林道の料金がそれに対応するものと思いますが、北陸電力がその収入を環境整備に使っているのか私は知りません。尾瀬は東京電力の私有地ということで責任所在が明確ですが、北陸電力は雲ノ平山域の環境になんらか関与しているのでしょうか?利用者から見て二重取りにならないような仕組みにしていけるのが理想と思います。
尾瀬は東京電力、有峰林道は北陸電力が関係していたのでしたか。知りませんでした。
電力会社も以前は経営に余裕があったんでしょうね。今はウクライナ問題もあって経営が苦しそうです。
訪れる人の多い太郎小屋や薬師岳には整備に投資できても、雲ノ平は難しそうです。
雲ノ平が太陽光発電所にならないことを願うばかりです。悪い冗談でスミマセン。
太陽光発電所の冗談🤭にならないよう、この楽園を次世代に良い形で継承できる社会でありたいですね。
長い間お付き合いありがとうございました😊
山深い山小屋で働いている方から比べると、千分の一も貢献出来てないなと思います。
これまで山小屋や、そこで働いておられる方の有り難さをあまり考えたことが無かったのですが、何故か今回はそのことが頭について離れませんでした。
きっと、秘境といわれる素晴らしいけど厳しい環境に居たせいだと思います。
norizo0717さんとは一期一会(でも3箇所の小屋でお会いしましたね。笑)の出会いでしたが、とても良い想い出が出来ました。
これからも山ライフを楽しんで下さい。こちらこそありがとうございました。
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